【船上生活】外航船ってスマホ使えるの?現役航海士が回答

船の通信事情 船乗りの仕事について

現代の日本では中学生以上になれば一人一台スマートフォンの時代。SNSも発達し24時間いつでもだれでもつながっています。

恋人が船乗りであったり、船に乗る職業につきたいと思っている人たちが一番気になるのが通信環境かもしれません。

そこで、現役航海士の筆者が経験した船の通信事情について解説していきたいと思います。

日本の近くを航海しているとき

スマホは陸上に設置された基地局を介して他のスマホと通信しています。そして、陸上には多くの基地局が設置されています。この基地局はビルの屋上や鉄塔の上に光ケーブルなどの有線で世界中の基地局とつながっています。

この基地局とスマホはもちろん電波でつながっており、この電波には反射しやすく真っすぐ進みやすい性質があります。

この性質により、日本の沿岸を航海し陸岸が見えるときはぎりぎり圏外にならないことがあります。ただし、非常に弱い電波なのでLINEでメッセージを送信するのにも数分かかり、画像を読み込むのにもかなり時間がかかります。

また、船は鉄板で作られているので船内の居住スペースでは電波が反射されてしまい通信することができません。学生時代、沿岸を航海しているときは休憩時間になれば窓際に張り付いたりして必死に電波を拾っていました。

窓に群がって電波を受信している図

沖を航海しているとき

陸上の基地局を経由して通信する場合は船の陸が見える場所でしか通信できな上にかなり微弱な電波だということはわかっていただけたでしょうか。普段使っている通信速度に慣れている人にはストレスがたまり使えたものじゃありません。

しかし、最近の船では通信技術の発達にのおかげで衛星通信により陸が見えない沖を航海しているときも通信することができるようになりました。このおかげで、天気予報などの航海に関する情報収集や、会社との連絡が自由に行えるようになりました。

船内でも衛星通信を利用するWi-Fiが飛んでいてそれを利用してスマホを使うことができます。しかし、衛星通信は船によってアンテナの設備が貧弱であったり、船の位置によって衛星通信ができなくなってしまうときがあります。また、衛星通信は通信にかかる費用が非常に高いため月々の通信料に制限があることもあります。今まで経験した制限では1週間につき600MBで夜間のみの利用がありました。一方で通信量無制限でいつでも使っていい船もありましたが、すべての船でそのような環境は期待できません。(中にはYouTubeを見れたりする船があるそうですが乗ったことがありません…。)

恋人やパートナーが船乗りの人はこのような事情があるのを知っていただけるとありがたいです…

船での通信には何かと制限があるので入港したときのために筆者はポケットWi-Fiを利用しています。


このPOKEFIは本体価格は少し高価ですが100ヵ国以上の国で利用することができ利用代金は他のポケットWi-Fiに比べるとかなりお得です。利用プランも1Dayプランや500MBプランなど用意されており、使いやすいです。入港24時間である場合は1Dayプランを利用したり、数時間の入港の時は通信量のプランを利用しています。しかし、国によっては電波が不安定であったりすることがデメリットとして考えられます。

会社の船では、衛星通信が導入されているのである程度は通信することができますが、船員養成学校の船(練習船)については学生の身分であるので学生用のWi-Fiは用意されていません。

恋人が船員養成学校(船員養成学校について詳しくはこちらの記事を参考に)に通っており練習船に乗っているという場合は数日おきに出て連絡が取れないということがあります。

まとめ

いかがだったでしょうか。

船に乗る限り多かれ少なかれ通信は制限されてしまいます。外航船員を辞める人の中には通信が不自由だからやめるという人もいます。スマホ依存の人にはしんどいのかもしれません。

しかし、ここ10年で通信技術はすさまじく発達して改善されています。昔は船のメールを利用して家族とのやり取りなどをしていた時代もあったそうです。

なので、そこまで悲観せずともよくなっていることは間違いありません。筆者は家族との連絡が取れる今の環境は非常にありがたいと思います。

船員を目指す学生たちのためになれば幸いです。

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