【現役航海士が教える】航海士・機関士のメリット・デメリット

航海士のメリットデメリット 船乗りの仕事について
商船系学生
商船系学生

「航海士・機関士って大変そうだけど実際どうなの?」


「将来、船乗りになりたいけど自分に合ってるのかわからない…」

船乗りを目指す学生たちは必ずこの疑問を持つのではないでしょうか。
筆者自身も学生の時代にこれから船乗りとしてやっていけるのかとても不安でした。

この記事ではそのような疑問に答えるために、外航船で現役航海士の筆者が感じた船乗りのメリット・デメリット3を解説します。

将来、船乗りになるかどうか迷っている人は必見です!

メモ

外航船とは外国間を航海する船のこと。一方で国内を航海する船を内航船という。

船乗りの仕事について知りたい方は「船乗りとは?仕事について簡単に解説」もご覧ください。

結論

外航船船乗りのメリットデメリットには以下のものがあります。

メリット

  1. 高収入
  2. 長期休暇がある
  3. 乗船中は衣食住が保証されている

デメリット

  1. 乗船中は働きっぱなし/不規則な生活
  2. 長期間家族・恋人に会えない
  3. 流行に乗れない/期間限定を逃す

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

【メリット①】高収入

高収入であることは外航船船乗りになる大きなメリットだと思います。

じゃあ実際どのくらいもらってるのかというと、新卒1年目の年収は約600万でした。
乗船中の給料が50万、休暇中の給料は25万で1年のうち約8カ月乗船し、これに加えてボーナスが支給されます。

国税庁の民間給与実態調査によれば20~24歳の平均給与が264万円25~29歳の平均給与は369万円だそうです。

このデータからも外航船船乗りはかなり高収入であることがわかるでしょう。

また、経験を積み順調に一等航海士に昇進していけば30歳代で年収は1000万円を超えることが可能です。

年収1000万以上の割合は全体の4.6%なので30代でこの年収に到達するのはかなりの魅力的ではないでしょうか。

メモ

一等航海士ってなに?という方は【解説】船内組織まとめ!外航船事情についてもご覧ください。

参照:国税庁「令和元年分 民間給与実態統計調査 調査結果報告」(PDF)

【メリット②】長期休暇がある

船乗りの勤務サイクルとして6カ月乗船して3カ月の休暇をとるというのが一般的です。

長期休暇は船乗りの醍醐味といっていいでしょう。休暇といっても基本給はもらえるので生活には困りません。

乗船中に稼いだ給料があるので海外旅行に行ったり、ひたすら引きこもったり自由です。

平日のすいてる時間に遊園地に行くこともできますし、人との予定も柔軟に合わせることができます。

筆者が学生の時はあまり意識していませんでしたが社会人になってみるとこれが結構ありがたいと思いました。普通の会社員であれば年に一回10連休があればいいところでしょう。

ただし、必ずしも6カ月乗船して3カ月の休暇がとれるというスケジュールになるかどうかはわからないので注意が必要です。

船の運航スケジュールはよく変わるので乗船が早まったり、交代できる人がおらず下船が延期になったりと不確定なことが多いです。

メモ

外航船船乗りは6カ月乗船して3カ月の休みがある。

【メリット③】乗船中は衣食住が保証されている

外航船では乗船したら一人一部屋与えられます。

入社1年目でも6畳程度のビジネスホテルのような部屋で乗船期間を過ごします。各部屋に冷蔵庫もあり不自由なく過ごすことができます。

筆者の場合は実家よりも乗船したときのほうが部屋が広いので正直、快適です。笑

衣について、筆者の会社では乗船時に作業着が支給されます。これは会社にもよるかもしれません。

食については法律で船員の食事を船主が保証することが規定されているので3食用意されます。

もちろんこれらの費用は給与天引きされません

乗船中の生活費は一切かかりません。筆者の場合は電子書籍を購入したり、お菓子などの嗜好品を購入するくらいで月々の出費は2万円程度です。

また、うちの会社の場合は毎月、雑誌やDVD・漫画などを購入する費用が船ごとに支給されるので娯楽の費用も掛かりません。

メモ

衣食住が保証されているので乗船中の生活費はかからない。

【デメリット①】乗船中は働きっぱなし/不規則な生活

メリットでお伝えしたように船乗りには長期休暇があります。その一方で、乗船中はほぼ休みなく働き続けなければなりません。

筆者の会社では、2週間か1月に1日程度は船内休日が与えられますが会社によっては乗船中に休みがないこともあるそうです。

船は24時間動き続けていて、動いている間は必ず誰かが働いています。夜中の3時でも機器に故障があれば対応しなければなりません。

また、出入港が多ければそれだけ労働時間外の待機時間も増えます。タイトなスケジュールであれば入港中の睡眠時間が3時間になることもあります。

オンとオフをうまく切り替えられる人なら乗船中でも上手に隙間時間で休息ができて働きやすいかもしれません。自室に帰ればベットもあるので横になって休むことができます。

筆者個人としては乗船中は仕事に専念して自己研鑽に励み、休暇はたまったお金で一気に遊ぶというスタイルを非常に気に入っています。休暇中は仕事のことを一切考えません。

メモ

長時間勤務で連勤になることがほとんど。睡眠不足になることも。

【デメリット②】長期間家族・恋人に会えない

船乗りが辞めていく大きな理由の一つに長期間、家族や友人に会えなくなることがあります。

6カ月も会えなかったら破局してしまうことも多々あったり、浮気されてしまったりということもあるそうです。恋人や、家族が大変なときでもすぐに駆け付けられないこともあります。

子供の入学式に参加できなかったり、恋人とクリスマスを過ごせなかったりするのは船乗りとしては避けては通れない道です。

しかし、休暇中の時間は思う存分、家族や恋人との時間に費やすことができます。激務な会社員だったら平日は夜遅くまで働いて、休日は疲れてどこにも出かけられない、なんてこともよくあるでしょう。

休暇中であれば行事には必ず参加することができます。また、いろんなところに遊びにつれていくこともできます。これは普通の会社員では難しい場合もあると思います。

筆者の父親は一般的な会社員でしたが、中学から単身赴任になりほとんどの行事に参加していません。

このようにイベントごとに参加できなくなるのは船乗りだけでもなく、一般的な会社員にもありうることだと思います。

メモ

家族と会えない期間は長いが、休暇中は全力を注げる。

【デメリット③】流行に乗れない/期間限定を逃す

6カ月も乗船していると世間の流れに置いていかれてしまいます。

例えば、

  • 下船したら知らない音楽が流行っていたり
  • 新しい漫画が流行っていたり
  • 好きな映画が公開されてから公開終了してしまっていたり

世間の流行はかなり変わっています。船の上ではスマートフォンを使えるので情報に敏感であればついていけるかもしれませんが、仕事で忙しくてそれどころではありません。

また、乗下船のタイミング次第では毎年、夏しか陸にいられなくなり桜を数年見れないなんてこともあります。

筆者も好きな映画の公開に下船が間に合わずに何度も見逃しました。このせいで、流行の音楽や映画に乗ろうとするのをやめて、マイペースに過ごすようにしています。

同窓会の案内などが来ても下船が間に合わなかったり、冠婚葬祭への参列もできないことも多々あります。

大事なときに陸に入れないことがつらくて船乗りを辞めていく人も少なくはありません。

メモ

流行には乗れない。冠婚葬祭や重要な行事に参加できないことも。

まとめ

いかがだったでしょうか。

船乗りのメリットには

  1. 高収入
  2. 長期休暇がある
  3. 乗船中は衣食住が保証されている

デメリットには

  1. 乗船中は働きっぱなし/不規則な生活
  2. 長期間家族・恋人に会えない
  3. 流行に乗れない/期間限定を逃す

がありました。

今回紹介したことが船乗りのすべてではありませんが将来船乗りになる上では必ず知っておかなければならないことです。

筆者自身は熟考の末、船乗りを選択しましたので後悔はありません。

この記事が船乗りを目指す人に少しでも参考になればうれしいです。

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