航海士や機関士になるにはどうしたらいいのかわからないという方へ。
本記事では外航船航海士・機関士になるために必要な資格やなる方法について現役航海士が解説します。
必要な資格
外航船で働くためには航海士なら三級海技士(航海)、機関士なら三級海技士(機関)を取得して船会社に就職する必要があります。
海技士資格というのは1級から6級まであります。
ではなぜ三級海技士の資格が必要なのでしょうか。
なぜ三級海技士が必要なのか
海技士資格は級によって乗ることができる船や職位が異なります。
上の表で外航船の航行区域は遠洋区域に当たります。また、ほとんどの外航船は5,000G/Tを超えているので航海士として外航船に乗るためには三級海技士が必要になってきます。
機関士についても同様で航行区域と機関の出力によって必要な資格が異なります。
一級海技士や二級海技士については三級海技士として乗船し実務の経験を積むことで取得することができます。
三級海技士をとるには
三級海技士の資格を取得するには
- 筆記試験
- 口述試験
- 身体検査
に合格しなければなりません。
筆記試験については誰でも受験することができるのですが、口述試験を受けるには乗船履歴が必要です。
そして、三級海技士の口述試験を受験するのに最低でも3年船に乗らなければいけません。
「免許取るのに三年も船に乗らなきゃいけないの?」と思ったそこのあなた。安心してください。
国が定めている「登録船舶職員養成施設」での乗船であれば1年でいい決まりがあります。
なので決められた教育機関の船であれば1年の乗船履歴で三級海技士を取得することができます。
外航船航海士になれる学校
三級海技士資格を取得することができる教育機関を大きく区分すると
- 商船高等専門学校
- 四年制大学の商船系学部
- 水産大学校を卒業後専攻科
があります。
商船高等専門学校(商船高専)
商船高専には
があります。中学を卒業後に入学、5年半在籍しそのうち一年間の乗船実習で乗船履歴を積みます。
そして、卒業後に身体検査と口述試験を受験し、三級海技士の資格を得ることができます。
卒業生の進路は外航内航問わず船会社であったり、物流や商船系の大学へ編入するなど様々です。
中学校を卒業してから5年半なので20歳~21歳で海技士資格を取得することができます。
商船系大学
商船系大学には
があります。それぞれ、海技士資格を取得するためには四年間の大学在学中に半年間の乗船履歴を積み、卒業後さらに半年間の乗船実習科の課程を経ることで合計一年の乗船履歴を得ることができます。
こちらも商船高専と同様に卒業後に口述試験を受けて航海士・機関士になることができます。
水産大学校を卒業後専攻科
水産大学校を卒業したのちに一年の専攻科に進むことで乗船履歴を積み、三級海技士を得ることができます。
ちなみに、長崎大学と鹿児島大学にも水産学部があり、卒業後に東京海洋大学の海洋科学専攻科を修了することで三級海技士の資格を得ることができます。
水産系で海技士資格を取得するには5年かかります。
船会社の自社養成制度
大学生になり、就職活動をしていて航海士に興味が湧く方もいると思います。
そのような人にも、まだ外航船航海士になることができる道は残っています。
船会社の「日本郵船」「商船三井」「川崎汽船」が四年制大卒者向けに行っている航海士・機関士の自社養成採用制度があります。
総合職の採用と同時期に募集があり、商船系の学生の採用枠とは別れています。
入社してから、1年の座学と1年分の乗船実習で三級海技士の資格を取得します。そのため、二年間お給料をもらいながら勉強することができます。
ただ採用枠が少ないことに加えて、募集対象が四年制大学卒業のすべての学生になるので必然的に倍率は高くなります。
航海士の就職活動
筆者は商船系大学に入学する前までは
「三級海技士の資格を取るだけで就職するのも余裕だ」
と思っておりました。
実際のところは、普通に一般的な大学生が行うような就職活動との違いはありませんでした。
よく「就職率100%」や「職に困らない」などと宣伝している学校もありますが、待遇がいい会社や人気のある船会社に入りたいと思うと厳しい道になります。学校が少なく競争率は低そうに見えるかもしれませんが、そもそも各社の募集枠が少ないので就職活動の難易度は低くはありません。
筆者も大学時代は就職活動を有利にするために海技士試験の筆記試験一級二級を受験したり、TOEICを頑張ったりと忙しくなかなか遊べませんでした。
もちろん人手不足な業界なので、選り好みしなければ就職先はたくさんあります。
学校に入れば安泰だからと、就職に有利だからと思って安易に商船系の学校に入ることはお勧めできません。
今から目指す人への注意点
ここまで、触れてきていなかったのですが身体検査についても説明します。
身体検査では指を広げたり、屈伸をしたりと簡単な動きができるか確認をされます。この段階で落ちる人はほぼいません。
ただし、船に乗るための条件に五体満足でなければなりません。また、気を失いやすいなどの持病がある方は船に乗れない可能性が高いです。私の学校にも、入学してから船に乗れないことが分かった人もいました。
さらに、色覚異常があると航海士になることができません。これは航海灯(緑や赤などの標識など)を色覚異常があると判別できない可能性があるためです。
まとめ
いかがだったでしょうか?
三級海技士を取得するには
- 商船高等専門学校・商船系大学学部に通う
- 水産系大学を卒業後、専攻科に進む
- 自社養成制度
がありました。
航海士・機関士を目指している方の疑問が解決できたなら幸いです。
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